フェア・ゲーム

2003年(平成15年)3月19日(日本時間20日)にイラク戦争は開戦されました。開戦に踏み切った理由づけとして『サダムフセイン大統領のイラクは、大量破壊兵器を持っている。』結局、大量破壊兵器は見つかることはなく、2003年7月6日付のニューヨーク・タイムズ紙にジョゼフ・ヴィルソン元駐ガボン大使が寄稿した記事によって、ブッシュ大統領やディック・チェイニー副大統領たち複数の政府高官によって情報操作をされたのでは?という【プレイム事件】へと発展しました。

この【フェア・ゲーム】は【プレイム事件】を描いた事実に基づいた2010年の実話の映画です。ジョゼフ・ウィルソンの回顧録『The Politics ofTruth』と、ジョセフ・ウィルソンの妻ヴァレリー・プライムの回顧録『Fair Game』に基づいて作品は作られました。エンドロールには、ヴァレリー・プライム本人が登場します。まさに実際に起きた出来事基づいた映画です。

フェア・ゲーム

フェア・ゲームの言葉の意味は、「かっこうの的」つまり「かも」という意味です。そしてこのタイトル通りにマスコミとブッシュ政権によってカモにされたのは、CIAの大量破壊兵器拡散防止部門で諜報員として働いていたヴァレリー・プレイム・ウィルソンと、その夫ジョー・ウィルソンです。

ヴァレリー・プレイムの夫ジョー・ウィルソンがブッシュ政権のイラク戦争遂行に批判的な言動をしていたことを不愉快に思っていたブッシュ政権が、ジョー・ウィルソンへの報復そしてイラク戦争批判を潰すための世論誘導として、この夫婦を「かっこうの的」へと仕立てあげ、ヴァレリー・プライムのCIA諜報員としての身分をリークした「プレイム事件」を扱っています。

第63回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されて、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞では「表現の自由賞」を受賞しました。

キャスト

ヴァレリー・プレイム・・・ ナオミ・ワッツ (日本語吹き替え:佐々木優子)

ジョー・ウィルソン・・・ ショーン・ペン (日本語吹き替え:山路和弘)

サム・プレイム・・・ サム・シェパード (日本語吹き替え:仲野裕)

ルイス・"スクーター"・リビー ・・・デヴィッド・アンドリュース (日本語吹き替え:相沢まさき)ダイアナ・・・ ブルック・スミス

ビル・・・ ノア・エメリッヒ (日本語吹き替え:ふくまつ進紗)

ジム・パビット・・・ ブルース・マッギル (日本語吹き替え:山本格)

ジャック・・・ マイケル・ケリー

カール・ローヴ・・・ アダム・ルフェーヴル

ディック・チェイニー・・・ 本人映像

コンドリーザ・ライス・・・ 本人映像

製作

監督・・・ダグ・リーマン

脚本・・・ジェズ・バターワース、ジョン=ヘンリー・バターワース

原作・・・ジョセフ・ウィルソン、ヴァレリー・プレイム

製作・・・ビル・ポーラッド、 ジャネット・ザッカー、ジェリー・ザッカー、アキヴァ・ゴールズマン、ジェズ・バターワース、ダグ・リーマン

製作総指揮・・・ジェフリー・スコール、デイヴィッド・バーティス、メアリー=ジョー・ウィンクラー、ケリー・フォスター、モハメド・カーラフ

音楽・・・ジョン・パウエル

撮影・・・ダグ・リーマン

編集・・・クリストファー・テレフセン

製作会社・・・リヴァー・ロード・エンターテインメント、パーティシパント・メディア、イメージネーション・アブダビ、ザッカー・プロダクションズ、ウィード・ロード・ピクチャーズ、ヒプノティック

公開日・・・アメリカ:2010年11月5日、日本:2011年10月29日

あらすじ

2001年9月11日に発生した同時多発テロから、アメリカのブッシュ政権はイラク政府が大量破壊兵器を密かに保有していて、世界中にテロを“輸出”している「悪の枢軸」のひとつだとして名指しで批判して、アメリカ世論を動かしながら着実に攻撃の準備を運んでいました。

主人公のヴァレリー・プライム(ナオミ・ワッツ)の仕事はCIA諜報員(アメリカ中央情報局)です。彼女がCIAで働いていることを知っているのは、彼女の夫ジョー・ウィルソン(ショーン・ペン)と、両親(父親:サム・シェバード、母親:ポリ・ホリディ)しか知りません。ヴァレリー・プライムはCIA諜報員として海外の機密に接しています。時には危険を伴う極秘作戦の数々にも関わりながら仕事をしています。

夫のジョー・ウィルソンは駐米大使として最近までガボン共和国で勤務していた外交官です。夫婦が別の姓のようにも思えますが、ヴァレリー・プライムの正式な名前はヴァレリー・プライム・ウィルソンです。

夫のジョー・ウィルソンがニジェールで元外交官をしていたという背景もあって、妻のヴァレリー・プライムのCIAの同僚がジョー・ウィルソンに接近して依頼します。その内容はアフリカのニジェールに行って情報を集めるようにとの依頼でした。CIAが求める情報とは、イエローケーキをイラク共和国が調達しているかどうかについての情報でした。

イエロー・ケーキとは、核兵器の作成するために使用するウラン鉱石の処理の時に得られる酸化ウランの不純な混合物で、ウラン精鉱のことです。

そして、極秘のうちにこの疑惑をヴァレリー・プライムは潜入捜査をして調べるうちに、イラクには核兵器開発計画がないことを突き止め、それを政府に報告します。そしてその一方で、夫のジョー・ウィルソンも国務省の依頼でニジェールへといきます。ジョー・ウィルソンは、NSC(国家安全保障会議)メンバーにも就任したことがあり、そのいきさつもあっての依頼でした。イラク政府が核兵器を開発するのに必要な濃縮ウランを密かに買い付けているという情報が正しいかどうかを突き詰めて確認するためでした。そしてジョー・ウィルソンもヴァレリー・プライムと同じようにイラク政府によるウラン購入の事実はない。という結論に達してCIAに報告します。

そしてCIAも、報告を受け入れて「フセイン政権は危険なそんざいではあるが、イラクに大量破壊兵器を開発する技術もお金もない」と推測して政府に報告するのでした。しかしそんな報告を承服できない人達がいます。ホワイトハウスの「ネオコン」と呼ばれる保守派のチェイニー副大統領たちです。

ジョージ・W・ブッシュ大統領は、一般教書演説でイラクが大量破壊兵器の製造でウラニウムの使用に言及します。そして軍事行動を起こすのでした。

自分があげた報告書とは違っている演説内容。そこでジョー・ウィルソンはニューヨーク・タイムズ誌に自身の署名入りで論評ページに「私がアフリカでみつけなかったもの」という自分が調べたこと見たこと真実の内容を投稿します。そしてジョージ・W・ブッシュ大統領のいう報告は無条件に虚偽の内容であることを主張するのでした。そしてそれはブッシュ政権の正統性が疑われることになり、大論争を巻き起こすのでした。そして、このジョー・ウィルソンによる内部告発によってアメリカの世論に影響を与えることを危惧したホワイトハウス側は、ジョー・ウィルソンの発言をどうにかしようと彼の社会的信用を奪うことをするのでした。

それはジョー・ウィルソンの妻ヴァレリー・プライムが現役のCIA諜報員であることをマスコミにリークすることで、ジョー・ウィルソンが妻から調査業務を斡旋してもらったから信頼性に欠けるということを世間に印象つけようとしました。事実ではないこれらのことは、後に事実ではないことが判明していますが、この内容はワシントンポストのコラム記事にもなって、夫婦は「かっこうの的」になりもなりました。

夫と自分の両親しか知らないはずのCIA諜報員のヴァレリー・プライムのことがメディアで報道されます。今まヴァレリー・プライムは友人たちに本当の職業(CIA諜報員)を隠して証券会社勤務であると偽ってきましたが、知るはずのない情報なのにマスコミを通して彼女の存在が明らかにされました。

身分を明らかにされて、友人たちも彼女の元から離れていきます。近所の人までも、手のひらを返したように冷たくなり、世間の好奇の目に晒されたヴァレリー・プライムの生活は崩壊していきます。自分の家族やヴァレリー・プライムに協力してくれる各国に散らばっている協力者にも危険が迫り、匿名で自宅には無言電話や脅迫状が届きます。そして身分が明らかになったことで、CIAを解雇されて18年間に及んだ彼女自身のキャリアも崩壊していくのでした。

ヴァレリー・プライムがCIA諜報員であることをワシントンの有力ジャーナリスト達にリークしたのは、ヴァレリー・プライムの夫がニューヨーク・タイムズ紙に寄稿したことを許さないチェイニー副大統領首席補佐官のルイス・“スクーター”・リビーだったのです。

夫のジョー・ウィルソンはメディアに出て、正義を論じます。そして妻のヴァレリーへも真実を明かすべきだというのでした。しかしヴァレリーは沈黙を貫いていきます。CIAの訓練で「絶対に折れない心」を鍛えられ、人生の18年間をCIAに注いできたからです。

沈黙を守るヴァレリーとは違って、ウィルソンは会見に出て主張します。しかし夫がマスコミで会見することでますます世間の注目を浴びて、家には中小誹謗の手紙に脅迫の電話がかかり、夫が会見することを了解したことを許せません。ジョーとヴァレリー夫婦の間も対立して暗雲が立ち込めヴァレリーにとって唯一の安らぎの場所でもある場所も崩壊しかかっています。

ヴァレリーは実家へ戻り、両親との穏やかな時間を過ごすうちに、大切なものは何か?!ということに気づくのでした。ウィルソンは自分達のような一般市民にはホワイトハウスの権力と同じほど巨大な権力と戦うしか他に方法はない。とヴァレリーを説得します。

そして彼女は、彼女お家族を守るためそして自分自身の名誉を守るためにアメリカ国家を相手に戦いを挑んでいくのでありました。CIAで培われた「絶対に折れない心」をヴァレリーはジョー・ウィルソンと結婚する時に誓った「この結婚だけは守る」という絶対に折れない心を彼女は忘れなかったのです。

事件はその後、国益を損なうリークは重罪と主張するウィルソン側の反撃で検察が動いて裁判への持ち込まれました。そして、ヴァレリー・プライムは夫の元へと戻って、議会委員会の前で証言します。そしてルイス・“スクーター”・リビーは偽証と司法妨害罪の判決を受けて懲役30ヶ月の刑へとなりました。(ブッシュ大統領は刑期を減じます)

原作者:ジョゼフ・ウィルソン

ジョゼフ・チャールズ・ウィルソン四世(1949年11月6日生まれ )は、アメリカ合衆国の中東アフリカ問題に関する専門家です。イラク大使代理、ガボン大使、国家安全保障会議(NSC)のアフリカ担当部長を歴任しています。ジョージ・W・ブッシュ政権の誕生後は退職してコンサルタント業を行っていました。

2002年にアメリカ中央情報局よりイラクがウランをニジェールから買い付けたという疑惑の調査でニジェールに派遣されたが大量破壊兵器は無いと結論付けていました。後に大量破壊兵器説は全くの出鱈目であった事が確認されましたが、その当時のブッシュ政権は大量破壊兵器があるとアメリカ世論に訴え続けていました。

これに対してウィルソンは2003年7月6日付けの米ニューヨーク・タイムズ紙に「What I Didn't Find in Africa」と題された文章を寄稿して世論に訴えましたが、7月14日にロバート・ノヴァクによって妻ヴァレリー・プレイムがCIAの工作員という身分を漏洩されます。これに対しウィルソンは記者会見を開いて、これはアメリカ合衆国政府の報復だと訴えました。

原作者:ヴァレリー・エリス・ウィルソン

ヴァレリー・エリス・ウィルソン(1963年4月19日生まれ )結婚前の姓名はヴァレリー・エリス・プレイムです。元女性CIA諜報員。1963年にアラスカ州アンカレッジに生まれています。ペンシルベニア州立大学を卒業後、CIAにスカウトされてバージニア州の研修所で訓練などを受け、その後ボストンにあるCIAによる架空会社の社員となり、海外出張という名目で大量破壊兵器の調査などの任務を行っていました。夫のジョゼフ・ウィルソンとはワシントンD.C.で出会って1998年4月3日に結婚しました。

夫ジョゼフはイラク戦争で、ブッシュ政権の主張する大量破壊兵器の存在に批判的でした。しかし、そのためにジョゼフに対しての報復を試みたアメリカ合衆国政府によって、2003年7月14日に彼女がCIAの工作員であるという身分を漏洩されました。これにより彼女は活動が出来なくなってしまいました。